日記(2月下旬)
■本日、バレンタインデーとやら。チョコレート屋さんののお力を借りなくても告白くらいできる年になっているので、私にはなんの関係もない日である。夕方、卒業生のHくんと会う。社会人になって一年あまり、少し痩せたか。夜は大学の職員の女の子二人と神楽坂でお食事。Hくんにしても女の子たちにしても、何を話すというでもない。私も特に真剣に相談に乗るとか、人生のアドヴァイスをするとかでもない。ただ一緒にある一定の時間を過ごし、彼らは彼らの世界の話をし、私は私の世界の話をするだけである。それでもなんとなく違った空気を吸ったような気分でお互い帰っていく。そうしたものだ。
■書いていた学会発表原稿が少し滞りがち。どこかで論理のボタンを掛け違っているらしく、すっきりしない論の運びになっている。いじくり回すも今ひとつ納得いかず。疲れ果てて春菊と豚肉のひとり鍋で夕食。
■5時に研究室で学生に会う。もう3月に卒業する4年生で、この4年間で唯一取ったCが一年前の私の授業だったのだという。これから大学院に行って勉強を続ける予定なので、なにがだめだったのか卒業前に聞いておきたいというので、彼女が最後に書いたペーパーとそのクラスの採点表を準備して彼女を待つ。「本当はもっと早く来るべきだったのですが、勇気が出なくて」嬉しくてつい私も饒舌になり、結局一時間以上いろいろと話をすることになった。彼女のこれからの学究生活に幸あれ。
■ネットで馴染みの雑貨屋さんをのぞいていたら、安くなっていたのでキッチンスケールを買う。さっそくお菓子用の薄力粉と全粒粉と無塩バターを用意して、手始めにスコーンを焼く。一流のパティシエが作る凝ったケーキもたまにはいいが、こういう田舎っぽいペーストリーはそれなりに味があって好きである。レーズンがちと焦げた。
■父が上京し、一晩泊めてくれというので、昼過ぎに飯田橋まで迎えに行く。昭和初年代生まれだが、和食にまったく興味がない。好きなのは中華とかタイとかインドの料理、それも現地風にわさわさ食すのがお好みである。もともとエスニックは少ない神楽坂の、それでも老舗といってよいインド料理やさんに行く。ライスなんか頼まず、バターたっぷりのナンと、匂いの強烈なラムカレーをオーダー。翌朝、残っていた小麦粉と全粒粉でパンケーキを焼き、どこかのシンポジュームに出かける父を送り出す。
■今日は午後の仕事は休み。ピアノのレッスンとヘアカットの予約を午後にいれてある。シューベルトの四手連弾曲「幻想曲」のF-morを初めて先生に合わせてもらう。二人並んで弾くと、互いの手がばんばん当たる。私の音楽史の知識なんかお粗末なもんだが、どう考えてもこれはシューベルト氏、お気に入りの女の弟子かなんかをくどこうとして作ったに違いない。今で言うなら、カラオケでデュエットを強要されているという感じか。これってセクハラじゃないの、フランツ?
■スコーンの出来に気をよくして、今度はシリコンのマフィン型を購入、バナナマフィンを焼いてみた。全部全粒粉を使ったので少々パサパサする。レシピにあったナッツを端折ったらなんだか妙に甘ったるい。気づいて岩塩をぱらぱら降ってみたら格段においしくなった。お菓子における塩の重要性を再確認する。昭和文学会に出す用の論文が今日で完成。昨年11月の発表で時間配分を間違えてしゃべれなかった部分を書いた。しゃべった分はまた3月の学会が終ったら論文にしよう。どこに出そうかしらん。
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