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June 05, 2009

落語の「ら」


昔、関西に「らくごのご」というテレビ番組があった。
笑福亭鶴瓶さんと桂朝丸(現ざこば)さんが観客から言葉をつのって、
その言葉を入れ込みながら即席の噺をするというもので、
「ご」は「語」であろう。
即興芸だから落語の「落」の方はなかったりする。

父親が気に入ってよく見ていたが、
私は朝丸さんがいつも器用に噺を作れず四苦八苦するのを見るのが苦しくて、
あまり好きにはなれなかった覚えがある。

鶴瓶さんのうまさとは対極にあった朝丸さんの不器用さも、
言ってみれば興のうちなのであろうが、
一生懸命な失敗を楽しんでいるみたいで、私の性には合わなかった。

(同じ理屈で私は「初めてのおつかい」みたいなのもあまり好きではない。
こういうものは最後に困難を乗り越えるところがいいのだろうけれども、
そこまでの経過を傍観している自分の位置がどうも私は好きでないらしい。
「らくごのご」はそんな予定調和すらないからひたすら私には苦しかった。)


ともあれ、これが極めて貧弱な私の落語経験である。
練り込まれた芸としての古典落語などあまり興味もなかった。
テレビで聞いたことあるのは米朝と枝雀くらい。
そんな私の生活に落語を取り込んでくれたのは、
iPodであり、Podcastであった。

テレビなどに露出がない数人の若手/中堅落語家さんたちによる、
古典落語のパフォーマンスを手にいれて聞くようになったのである。
声そのものがよい人、枕がうまい人、すぐ噛む人、
流暢だけどあんまりおもしろいとは思えない人。
どれもそれなりに味があってよい。

その中に私の好きなお声の方がいて瀧川鯉橋さんと言った。
ネットで調べてみるとその方がゲストで呼ばれている会があったので、
切符を買い求めてみた。

初めてのライブ落語。行ってみるとメインは桂都丸さんであった。
お名前は知らなかったが、お顔は関西のテレビではよくお見かけする。
だみ声ながら芸は素晴らしく、なんとも言えぬ間があって、
関西の間が大好きな私はけっけけっけ笑い通しであった。


さて、中入りがあり、次はお目当ての・・・あり?
瀧川鯉橋さんじゃねえじゃん!
なんと私が購入した会のゲストは、
鯉橋さんのお師匠さんである瀧川鯉昇さんだったのである。
後で知ったところによると、このお師匠さんはなかなか有名な方らしく、
いぶし銀の芸だという評判であった。

たしかに派手なところはないが、
要所要所で毒の利いたせりふで「くすっ」を誘発するその芸には
感嘆させられた。
英語で言うならdry witというやつに近いか。
家に帰ってさっそくいくつか購入したほど気にいった。
めちゃくちゃ愉しかったのだから、「終わりよければすべて良し」である。


自分のポカを正当化するのもどうかと思うが、
そのおかげで、一つ世界が広がったじゃないか。
おっちょこちょいでもたまにはよいこともある。

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