夢
私は空港に向かっている。
この飛行機を逃すと日本に帰れない。絶対乗るのだ、と思っている。
それなのに、私は出発時刻を正確に知らない。
ただ遅れそうだ、ということだけ知っている。
周りの人々は優しく、暖かく、私を送る会を催してくれている。
なのに、私は出発の時間が気になって気になって、
ちゃんと彼らに応対することができない。
ごめんなさい、ごめんなさい、こんなにしていただいたのに、
と呟きながら、それでも私は空港を目指す。
空港に行くには私が普段は通らない猥雑な町並みを
通りすぎていかなければならない。
品物を積み上げた市場の細い路地は、嗅いだことのないような、
複雑なスパイスの香りがし、狭い階段にはモノが溢れ、
肌の色の違う男達が私をじろじろ見ている。
ごめんなさい、ごめんなさい、
私は日本に帰らなければならないの、
どうしてもあの飛行機に乗らなければならないの、
ごめんなさい、ごめんなさい。。。
私は東洋人の人形のようにぺこぺこ頭を下げながら、
卑屈な愛想笑いを浮べて、先を急ぐ。
空港は、恐ろしいほど近未来的で、
銀色に輝く、上が見えないほど長いエスカレーターを
上がっていかなければならない。
一列に並んで横を開けるなどというルールを持たない人々を、
右へ左へ掻き分けて、ああ、遅れる、遅れる、と
私は動かない足を引きずってどこかを目指す。
待って、待って、置いてかないで。
私はそれに乗らないと日本に帰れないんです。
涙で喉がきゅっとなって、目が覚めた。